伊香保温泉に構える宿は44軒あります。
旅館でどこにこだわるかはそれぞれですが、伊香保に来るからにはホンモノの「温泉」を利用してほしい。
伊香保温泉には、「黄金の湯(こがねのゆ)」と「白金の湯(しろかねのゆ)」の2つの源泉があります。
結論を言うと「黄金の湯」は、万葉集の時代からある本家ホンモノ。白金の湯は歴史の浅い意見の分かれる温泉?です。
お湯で本物を絞り、さらに地元の私が厳選しておすすめする2軒を後半で詳しくご紹介します。
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1.黄金の湯の権利をもつ旅館
黄金の湯が本家ホンモノ
伊香保で歴史ある温泉は「黄金の湯」(こがねのゆ)。
一方で「白金の湯」(しろかねのゆ)は1997年に近代掘削技術が活用された少々無理のある温泉。人によっては温泉とは言えないという。
伊香保温泉は地元の結託が強く、地元の町内会や行事もお互いの目が厳しく光ります。厳格な温泉を守る地元文化が1500年代後半から続いているので無理もありません。
湧出量
黄金の湯は温泉が湧き出る噴出口6か所のうち、第二号源泉は伊香保露天風呂(共同浴場)のすぐ横にあります。誰でも見ることができるのでぜひお立ち寄りください。-地図-
第二号源泉は、1,443リットル/分湧き出ています。
その他の源泉を合わせると全部で4,000リットル/分の湯量があります。
全国で自然に湧き出る温泉で日本一は草津温泉で31,000リットル/分、二位は別府温泉で15000リットル/分。
量で見ると伊香保は10位にも入りません。それでも、黄金の湯は一般家庭の200リットルの風呂なら3秒で溢れる量です。
一方、伊香保にもう一つある白金の湯は110リットル/分しかありません。
市のページには水量が多いように記されていますが、温泉としては小規模です。1~3旅館分のかけ流しの量に相当する湧出量ですが、それを27もの旅館が利用しています。
黄金の湯の権利を持つ10旅館
黄金の湯は以下の旅館、ホテルが所有しています。
お湯で判断するのであれば、以下のいずれかの宿泊施設から選べばハズレはありません。
- ホテル木暮
- 千明仁泉亭
- 岸権旅館
- 森秋旅館
- 横手館
- 伊香保グランドホテル(伊藤園ホテルズ系列)
- 金太夫(伊藤園ホテルズ系列)
- 古久家
- 塚越屋七兵衛
- 香雲館
黄金の湯に限らず温泉は、土地同様に権利があり、温泉権という日本の物件法で守られています。
先にご紹介した10の旅館、ホテル以外に、渋川市、伊香保温泉組合、群馬大学など合わせ、権利保有先は全部で13あります。権利は一定量ではなく、地元の昔からの力関係や歴史から権利をもつ量に差があります。
黄金の湯権利者から分配を受ける旅館
権利をもつ10軒の旅館からは、13軒の旅館に対して有料でお湯を分けています(一部は独り占め)。以下が黄金の湯を有料で権利者から引いている旅館です。
- 橋本ホテル
- 福一
- 凌雲閣
- 吉田屋旅館
- 青山旅館
- 丸本館
- 大江戸温泉物語 伊香保
- 石坂旅館
- お宿 玉樹
- ホテル松本楼
- 洋風旅館ぴのん
- ホテル天坊
- 如心の里 ひびき野
先の権利をもつ10軒の旅館と、それを有料で分配された湯を購入している旅館を合わせて23軒。
これら23軒だけで、昔からある黄金の湯が楽しめます。
伊香保には全部で44の旅館がありますが、残りの21旅館はどうしているのか?
次にご紹介する、白金の湯を利用しています。
白金の湯のみ利用する旅館
白金の湯(しろかねのゆ)は、掘って開発した渋川市が保有しています。
利用する旅館は渋川市の許可と、加入金(利用口径に応じて17万~90万円)、利用料(50㎥で7,500円/月、以降従量)を支払うことで利用できます。
家庭用の水道は50㎥で8,500円ぐらいなので、白金の湯は水道よりも安い計算です。
44の旅館のうち、17軒は白金の湯をひいていません。温泉のプロが設備投資してまで利用する温泉ではないことがなんとなく見えてきます。
例えば、湧出量。
黄金の湯は4,000リットル/分ですが、白金の湯は110リットル/分の湯量です。
目安ですが、源泉かけ流しを実現するには、1人のお客さんに対して1リットル/分のお湯が必要です。
白金の湯は27の旅館が利用しますが、かけ流しは不可能。どの旅館も循環させて利用しています。
お風呂は循環させるとなると、衛生面の対策のため、きちんと消毒し、ろ過する必要があります。
伊香保に限らず、塩素臭(プールの臭い)がする温泉があるのはこのためです。消毒するということは、成分も変化してしまうので、個人的には避けたいです。
以下が、白金の湯しか利用していない旅館です。
お湯はおすすめできない。
- 景風流の宿 かのうや
- 奥伊香保 旅邸 諧暢楼
- 和心の宿オーモリ
- おもてなしの宿 美松館
- 伊香保温泉とどろき
- ホテルきむら
- よろこびの宿 しん喜
- なつかしき宿 いかほ秀水園
- 一冨士ホテル
- 山陽ホテル
- ホテルいかほ銀水
- 市川別館 晴観荘
- 旅館ふくぜん
- 徳田屋旅館
- 旅館榮泉閣
- あかりの宿 おかべ
- さくらい旅館
- ホテルニュー伊香保
- 割烹旅館 春日楼
- お宿かつほ
誤解があるといけないですが、これらの旅館にはお湯以外の料理や、エステ、サービスなど素晴らしい旅館はあります。
私は温泉派なので、サービスも料理もこだわりがありません。
絶対に避けてほしいのは、上記20の旅館のうち、ホームページに悪意を感じる旅館です。
具体名は伏せますが、伝統あるお湯のように遠回しに表現しているところがあります。そういう旅館は避けたいですね。
ウソはだめです。
逆にお湯についてはまったく表記しない旅館もあります。
例えば、諧暢楼(かいちろう)はお料理、お酒、リラクゼーションを推しています。お湯以外に価値を出している高級旅館です。かなりのハイクラスですが、温泉以外の目的でいつかは泊まりたいと思います。
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2.雰囲気に酔えるホンモノ温泉旅館2選
普段から、出張で鉄筋コンクリートのホテルに泊まることが多い私は、少々ボロでも旅館が落ち着きます。歴史もあり、雰囲気もインスタ映えするような旅館をお勧め順に紹介します。
千明仁泉亭(ちぎらじんせんてい)
和風で歴史の重みがある由緒ある旅館です。
歴史もある由緒ある旅館ですが、16,000円~35,000円ぐらいの価格帯なので許容できる範囲かと思います。
石段のすぐ横という好立地
千明仁泉亭の良い特徴に立地があります。
名高い石段のすぐ横にあるため、伊香保ワールドに浸りっぱなしです。石段街から離れるほど、生活感が目に入るので、現実から解放されるにはもってこいの旅館です。
伊香保で最も贅沢に黄金の湯を利用
この旅館、温泉のお湯を伊香保で1番贅沢に使っています。
黄金の湯の権利を持つ千明仁泉亭は、源泉の約10%を引き込んでいます。多くの旅館は、他の旅館に分配している中、千明仁泉亭はすべて自身で消費しています。
ドバドバと、黄金の湯を一人当たり3.3リットル/分も使用。
※(収容人数150名、湯量500リットル/分)
参考ですが、かけ流しは一人1リットル/分あれば十分な目安です。それの3倍も贅沢に使っているのは、ここしかない。
湯量は伊香保のホテル小暮が1番です。引き込む伊香保全体の25%と圧倒的。ただ、ホテル小暮は収容人数が多く、一人あたり2.2リットル/分になります。
※(収容人数500名、湯量1,100リットル/分)
地元のご老人達は、千明仁泉亭のお湯が1番「濃い」といいます。実際濃度に差はないはずですが、豊富な湯量から湯の華や凝固した成分からそう感じるのだと思います。
横手館
建物外観が一番すてき
伊香保で建物外観の雰囲気が1番です。
周囲が暗くなり、夜になるとライトアップされたかのような大正の雰囲気が漂う素晴らしい姿が見られます。横手館の外観には一目ぼれするはずです。
一番の特徴は、本館の建物が総ヒノキで4階建てという点です。お風呂でヒノキといわれると気分が高揚しますが、本体がヒノキという贅沢さは初めて聞きます。
横手館の生い立ち
創立は1710年頃ですが、当時は伊香保の階段の上で小規模に旅館とたばこ屋を営業。当時の伊香保では、旅館業と他を兼業していた時代です。
大正6年(1917年)には現在の地に移転するも、3年後の1920年8月20日に伊香保の大火で燃えてしまう。普通ならそこであきらめるところを、同年に再度立て直し、現在に至ります。
現在でも頻繁に改築し、歴史と快適性の両方が同じ旅館で楽しめます。
3タイプのお部屋
お部屋は3種類あります。
- 本館西棟
- 本館東棟(ほんかんひがしとう)
- 別館常磐苑(べっかん ときわえん)
それぞれの特徴を理解しておかないと、好みによってせっかくの宿泊が台無しになってしまいます。
少々不便でも歴史あるお部屋なら「本館西棟」
鉄筋コンクリートの近代的なお部屋は「別館常盤苑」
「本館東棟」はそれぞれの中間です。
値段は1,000円~2,000円の差が目安ですが、時期によって変動します。高い順に「本館東棟」「別館常盤苑」「本館西棟」です。
特に経験してほしいのは「本館西棟」。大正9年(1920年)に総ヒノキ造りで建築されたお部屋です。
ただし、トイレが共用で夏場の冷房がありません。朝晩は涼しい伊香保ですが、我が家のように贅沢に育った子供を連れて行くのは厳しいです。
本館東棟は、本館西棟が改装され、トイレ、冷暖房完備。別館常盤苑は平成6年(1994年)に建て直し、鉄筋コンクリート造りです。正直、別館常盤苑までいってしまうと他の旅館の方がいい。
お風呂は黄金の湯 源泉かけ流し
黄金の湯の権利をもつ旅館ですが、お風呂が1つだけ残念な点があります。
源泉かけ流しではありますが、プレート式熱交換器で加温している点です。知らなければ絶対に差はわかりませんが、気分的に-10点。
源泉から近い方ではありますが、約2km離れていることからどうしても水温が低下してしまいます。
湯の量は推定で220リットル/分(伊香保小間口系統図から推定)。収容人数は175名なので、かけ流しには十分の量ですが、湯温が保てる量はありません。
参考ですが、かけ流しの表現は温泉法で以下のとおり決められています。
- 「源泉100%かけ流し」・・・何もしていない
- 「源泉かけ流し」・・・加温のみ
- 「温泉かけ流し」・・・加水、加温している
加温している横手館は「源泉かけ流し」までしか表現できません。
まとめ
伊香保温泉はそれほど広い温泉ではありませんが、 44も旅館があります。
ホンモノの源泉の権利を保有する温泉はわずか10軒。その中で地元民が胸を張っておすすめできるのが「千明仁泉亭」と「横手館」の2旅館です。
千明仁泉亭は最も贅沢に源泉かけ流し。横手間は伊香保で最も惚れる総ヒノキの建物です。この2軒がダメなら、もう伊香保は諦めて草津へ向かいましょう。